商標登録の手続・流れ
商標登録をする意味・効果は、大きくは次の2つがあります。
1 自社の商標と同じような商標を他社に使わせないようにする
2 自社の商標を安全に、他社の商標権を侵害せずに使えるようにする
(詳しくは、ブログ記事「商標登録の基本」をご参照ください。)
よく企業の経営課題として、「ブランド力の向上」と言われることがあります。
「ブランド」とは「商標」のことでもあり、ブランド力を向上させるためには、上述のような効果を持つ商標登録が有効な手段といえます。
では、商標登録をするためには、どのような手続を、どのような流れで行うのか?ということを、今回はご説明していきます。
商標登録出願
商標登録を行うための最初の手続は「商標登録出願」です。
商標登録出願については、単に「商標出願」と略される方もいますし、少し正確ではないのですが「商標申請」と呼ばれる方も多いです。
商標登録出願は、「商標登録願」と呼ばれる願書を作成して、特許庁に提出する手続になります。
願書は、紙で作成して、特許庁の窓口に持参して提出したり、郵送で提出することもできますし、電子データで作成して、オンラインで特許庁に提出することもできます。(以下では、特に言及しませんが、商標登録出願以外の手続も紙で行うことができ、多くの手続でオンラインでの提出もできるようになっています。)
願書には、主に次のような項目を記載します。
(1)商標登録をしたい商標
(2)商標登録をしたい商標を使う商品・サービス(「指定商品・指定役務」と呼びます。)
(3)商標登録の名義となる人・会社の氏名・名称
(3)商標登録の名義となる人・会社の住所
特許庁の審査
商標登録出願を行うと、出願した内容について、特許庁によって審査されます。
特許庁の審査には、約半年か約1年かかっています(2021年3月時点)。
1件1件の商標審査には、それ程時間がかかるものではありませんが、審査の順番待ちで、こんなに長い審査期間になっています。
審査期間が半年か1年かでは大きな違いがありますが、これは、願書の記載項目のうち「指定商品・指定役務」に記載する商品やサービスの名称によって、どちらかにわかれます。具体的には、商品・サービスの名称が、特許庁の審査基準などに明記されている場合は半年、明記されていない場合は1年となります。これは、指定商品・指定役務として記載される商品・サービスの名称も特許庁の審査の対象になるのですが、商品・サービスの名称が特許庁の審査基準などに明記されているものであれば、ここでの審査に時間がかからないので半年程度で審査結果を出すような運用を特許庁が行っているためです。
拒絶理由通知書と対応
特許庁の審査に、すんなりと通る場合は、この項の手続は必要ありません。
特許庁の審査に、すんなりと通らない場合は、特許庁から「拒絶理由通知書」という書類が届きます。
拒絶理由通知書には、出願された商標について、商標登録の要件をクリアしていないので商標登録すべきでないという特許庁の判断と、その理由(クリアしていない商標登録の要件)が示されます。
商標登録すべきでない理由には、様々なものがありますが、よく問題になるのは次の2つです。
(1)出願された商標が、「指定商品・指定役務」の分野で一般的な名称であるから、商標登録すべきでない
(2)出願された商標が、先に出願された他人の商標と同じようなものであり、かつ指定商品・指定役務も同じようなものであるため、商標登録すべきでない
拒絶理由通知書は、特許庁の最終的な審査結果を示すものではありません。
拒絶理由通知書の内容などにもよりますが、拒絶理由通知書に適切に対応することによって、審査に通って商標登録できる可能性も十分あります。
拒絶理由通知書には、主に、次のような手続を行うことで対応します。
(1)拒絶理由通知書で示された商標登録すべきでない理由に反論して、出願された商標は商標登録すべきと主張する「意見書」を作成して、特許庁に提出する
(2)指定商品・指定役務に記載した商品・サービスの名称を修正する「手続補正書」を作成して、特許庁に提出する
ちなみに、拒絶理由通知書に対しては、必ず何らかの対応をしなければならないという訳ではなく、何もせずに放置することもあります。拒絶理由通知書を読んで、意見書や手続補正書を提出しても商標登録は相当困難と考えられるようなケースなどでは、この段階で商標登録を断念して放置します。
放置すると、後程述べますが、基本的には「拒絶査定」という、商標登録を認めないという特許庁の最終審査結果となります。
審査結果 登録査定・拒絶査定
特許庁の審査にすんなり通った場合や、拒絶理由通知書に適切に対応して審査に通ると、特許庁から「登録査定」という書類が届きます。
登録査定は、出願した商標が特許庁の審査に通ったことを意味します。
そして、登録査定を受け取った日から30日以内に特許庁に商標登録料(10年分の商標登録料と5年分の商標登録料のどちらを納めるか選択できます。)を納めると、出願した商標が商標登録されます。
商標登録されると、特許庁によって「商標登録証」が発行され、送られてきます。
拒絶理由通知書に対応せず放置した場合や、拒絶理由通知書に対応したけれども特許庁の審査に通らなかった場合は、特許庁から「拒絶査定」という書類が届きます。
拒絶査定は、出願した商標について商標登録を認めないという特許庁の審査結果です。
拒絶査定は、一応、特許庁の最終的な審査結果と言え、ここで商標登録を断念することもありますが、さらに、「拒絶査定不服審判」という手続で、出願した商標は商標登録されるべきと争うこともできます。
拒絶査定不服審判は、特許庁で行う手続ですが、これは「審査」ではなく「審判」という手続になります。
ちなみに、拒絶査定不服審判でも商標登録が認められない場合、高等裁判所、最高裁判所で争う道も残されています。
商標登録の更新
商標登録の基本的な存続期間は10年間です。
11年目以降も商標登録を維持したい場合は、商標登録の更新の手続を行います。
商標登録の更新の手続は、商標登録の存続期間が満了する6か月前から満了日までの間に行います。
ちなみに、商標登録の期間として10年も必要ないと考えられる商標については、登録査定が来て商標登録料を納める段階で5年分の商標登録料を納めているケースもあります。このケースで、やっぱり6年目以降も商標登録を維持したいという場合は、5年が経過する前に、後半の5年分の商標登録料を納めます。
商標登録の更新は何回でも行うことができますので、以降、5年ごと、あるいは10年ごとに、必要に応じて更新の手続を行っていきます。
商標登録の手続を誰がやるか?
ここまで、商標登録のための主要な手続と、その流れをご説明してきました。
これらの手続は、ご自分で行うこともできますし、商標登録の専門家である弁理士に依頼することもできます。
ご自分で行う場合は、弁理士費用がかからないのでコスト的なメリットがあります。
一方で、商標登録出願の手続を適切な内容・範囲で行うことや、拒絶理由通知書への適切な対応は、専門家でないと難しい場合もあり、弁理士を使わないと、商標登録できていても見当違いの範囲で商標登録されていたり、適切に対応していれば商標登録できたのにできなかったというケースも出てくるでしょう。